最近(2020年1月)、ベテルギウスの光が弱まったことが観測され、ベテルギウスの爆発が間近に迫っているのではないかと話題になった。
ベテルギウスと地球は600光年離れている。
すなわち、光の速さでもベテルギウスから地球に到達するには600年かかることになる。
夜空を見上げて我々は、600年前のベテルギウスの光を観測しているのだ。
ニュースで「オリオン座のベテルギウスが爆発間近」という記事を見て違和感があるのはそのせいだ。
我々にとってはベテルギウスの爆発は今から起きることだが、ベテルギウスからしてみれば爆発はすでに600年前に起きてしまっている可能性だってある。
ただ、地球上の我々が爆発を観測していないから、オリオン座のベテルギウスは存在すると理科の教科書に載っているのだ。
これと似た話として、コロンブスによるアメリカ大陸発見がある。
ヨーロッパ人は1492年、クリストファー・コロンブスによって初めてアメリカ海域に到達した。
これも歴史の教科書に載っている話であるが、アメリカを初めて発見したのは言うまでもなく、ネイティブアメリカンであり、コロンブスのアメリカ大陸発見は西洋人の歴史観でしか重要な意味合いを持たない。
ベテルギウスの爆発にせよ、アメリカ大陸の発見にせよ、我々は特定の視点からしか物事を見ることができないため、本質を見失いがちなのである。
ネイティブアメリカンの方が早くにアメリカに到達しているにもかかわらず、コロンブスは西洋史でアメリカを発見した人物と称されるし、ベテルギウスは既に爆発し、今や存在していない可能性もあるのに、これから爆発するかのように報道される。
ネイティブアメリカンの立場、ベテルギウスの立場から物事を見ると、これらはとても滑稽なことに思えてくるだろう。
視点が異なれば見える世界も異なる。これを念頭において、星空を見上げるのもまた趣があるだろう。